いままで多くの機会をいただいて、兼業ながら商業出版で、IT技術についてそれなりの数の本を書いてきました。
ぱっと数えたら、単著5冊、共著・ムック6冊で、その他に雑誌寄稿が多数あります。
その中でそれなりに多くの編集さんとお仕事をする機会がありまして、著者として担当さんに期待する振る舞いが見えてきたので記録しておきます。
あなたがわたしと同じ状況になったとき(=執筆機会を得たとき)、担当さんに要請しておき、担当さんが応えてくれた場合、その本は素晴らしいものになるでしょう。
自分の想い
- できるだけミスを減らしたい(当たり前品質)
- そのために、原稿を版管理・差分管理したい
- そのために、Linter、検索ツール、文書校正ツールなどを活用したい
- ならば、極力テキストフォーマット状態で作業するのが都合が良いという認識
- できるだけ良いものにしたい(魅力的品質)
- そのために、力を出し合って制作したい
- 著者や、著者ルーツのレビュワーだけでやるなら、正直なところ仕上がりは自主制作と大差ない
- なお販路など大きな違いがある点もある。特に業界リテラシがない層へのリーチは商業出版が圧倒的に強いと思う
想定している状況
- 原稿:Markdownなどテキストベースで作成し、版管理・差分管理できている
- 初稿PDF以降:原稿からPDFの再作成が難しく、初稿PDF作成以後はPDFで完結する必要がある
- 原稿を修正しそのままPDFが再作成できるのが望ましいが、諸事情でそれはできない、という状況を想定(経験から)
- 原稿の状態で有識者に第三者レビューをお願いする
- レビュワーは往々にして著者が手配する
編集さんへの期待役割
- 一緒に本を作る仲間であること
- 本の最初の読者であること
編集さんへの具体的な期待行動(本題)
- 校正、単語や言い回し・表記など、文字列の変更は、初稿PDF作成前に、原稿の段階で完了してください(差分把握・品質確保のため)
- 結果としてPDFにしてから文字列を変更することは往々にしてありますが、PDFにしてから文字列を変更することを前提にしないでください
- 基本的に初稿PDFを作成する前に校正してください(品質確保のため)
- 第三者レビューの前に、読んで、あらかた校正してください(じゃないとレビュワーに失礼)
- 原稿から初稿PDFを作成するときは、文章を一字一句同じにしてください(意図的な変更箇所を明確にし、デグレを防止するため)
- 初稿PDFを作成した後の変更は、全てPDFコメントにしてください(意図的な変更箇所を明確にし、デグレを防止するため)
事例
経験上、こちらから何も言わずとも期待行動に書いた内容を自ら果たしてくれる方もいれば、お願いしても動いてくれない方もいます。
担当がここまで労力をかけちゃうと収支が真っ赤になっちゃうのでやれない・やらない、ということもあるのかもしれない(憶測)。
事前にお願いしたわけではないものの、この3冊の担当さんは特に素晴らしくて、とても積極的に執筆・制作に関わっていただき、結果として自分の満足度が高く・品質も比較的高くなったと思います。
残念ながら、それでもなぜか、しょーもない間違いや誤字脱字は残るのですが、、、
ともあれ、これらの書籍の執筆体験を振り返ると、同じ担当さんであればもう一度一緒にやりたいし、この担当さんが執筆者を探しているなら友人を紹介できます。
なお雑誌の場合は、数ページ〜十数ページ(〜2万文字くらい)と軽いのと、締切まで短いので、原稿段階での精査はやりきれないことが多いかなと思います。
(わたしの場合は、始めての商業誌への寄稿が第一特集全部で計30ページ超えとハイボリュームでしたが、特集全部を一人でというのは多いのでしょうか...)
なお雑誌の場合も、編集さんが(内容まで含めて)"読んで"くれるかどうかで、執筆体験と記事品質はあからさまに変わるのでご留意ください。
ご参考まで!